フクダ電子アリーナ

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2017年11月13日月曜日

豊田スタジアムの歩き方 徹底攻略ガイド 豊橋旅行 その10



 今シーズン初めてホームのフクアリで湘南ベルマーレに敗北を喫すと、それまで張りつめていた緊張の糸が切れるように、まさかの5試合連続未勝利が続きました。


 第33節まで終了し、51得点(リーグ4位)を挙げるも、49失点(同18位)を喫し、13勝8分け12敗の11位と、J1昇格プレーオフ進出圏内の6位には程遠い成績。


 さらに、第34節のアウェイ vs V・ファーレン長崎戦(1-2)、続く第35節のアウェイ vs 京都サンガFC戦(0-2)を落とし順位を12位まで下げると、チームの雰囲気は最悪に。




 今シーズンのジェフ千葉は、他チームには類を見ないハイプレス・ハイラインという戦術を採用し、より攻撃的なスタイルでJ2リーグを戦い抜く姿勢を見せていますが、この位置に低迷している原因をエスナイデル監督は、戦術の浸透度ではなく、選手のメンタルにあるとみていました。


 そんなチーム状況を監督であるフアン・エスナイデルはこう語ります。


 「チームとしてはっきりとしたアイデアを持ってプレーしています。試合の主導権を握って主役の座についた中で、結果を狙いにいきたいと考えています」




 「主導権を握るという点に関して言うと、ここまでの大半の試合でそれが実現できていると思います。ただし、チームとして波があるところが課題です。それによって今チームとして上位に付けることが出来ていません」


 「とはいえ、アグレッシブに高い位置からプレッシャーを掛けていく中で、各ラインをコンパクトにプレーすることを目指しています。ボールを保持している時、チームは心地良くプレーできている。監督として、チームがボールを持っている時にいいプレーをしていることにはとても満足しています」


 コンスタントに結果を出すために必要なことについてエスナイデル監督は、


 「安定することです。特に精神的に強くならなくてはいけません。精神面で波があってはいけない。なぜなら、サッカー面で我々は良いプレーができます。テクニカルな選手が多く、ボールを上手く扱えます。そうしたプレーによって決定機を数多く作れるということを証明しているからです」




 「ただし、プレーの再現性という意味では課題もあります。いい試合をした後に、悪い試合をしてしまうこともあります。そういう調子の波がこのリーグにおいて上位に位置できない理由だと考えています」と語りました。


 エスナイデル監督は、自身が持ち込んだ戦術やアイデア、トレーニングの仕方についても選手達は良く受け入れてくれており、試合ごとに精神面でイレギュラーさが出てしまうところに一番の問題が隠されていると分析していました。


 そして、選手達の精神面を今よりも強化していければ、間違いなくチームは上位に行くことが出来るはずだと、選手達の成長を信じて疑いませんでした。




 すると、シーズンも終盤に差し掛かってどのチームも累積警告やケガによりベストメンバーが組めない中、今までの低迷が嘘のようにジェフ千葉に躍動感が戻ってきました。


 きっかけは、沖縄キャンプの頃から地道に続けていた「食事改革」でした。


 「なぜ、こんなに味付けが濃くて、脂っこいものが多いんだ!」




 新しい冒険が始まると意気揚々と臨んだ2017年シーズン前の沖縄キャンプで、宿泊先のホテルのレストランに並んだビュッフェ形式の食事を見て、エスナイデル監督は愕然としました。


 テーブルに置かれたメイン料理は脂身のある牛肉、味付けされた豚肉に皮の付いた鶏肉、それに濃い味付けの魚まで・・・。


 パスタのソースは選び放題で、おかずもよりどりみどり、まさにリゾートホテルで食事を楽しむ観光客のようでした。




 選手の皿を見ると、牛肉、豚肉、鶏肉などがてんこ盛り、さらに白米まで添えられているのを見ると、ふつふつと怒りが込み上げてきました。


 「これはアスリートの食事ではない!」


 現役時代はレアル・マドリードやユベントス、リバープレートなど各国のビッグクラブでプレーし、指導者になってからもスペインリーグのレアル・サラゴサやヘタフェで指揮を執ってきたエスナイデル監督にとって、目の前に並んでいた食事は、これまでの常識では考えられないものだったのです。




 「私が要求するフィジカル的な負荷に対応できるようにするためには、食事から改善しないといけない。食事の質をもっと上げるべきだ。栄養価の高いもの摂り、無駄な脂肪は摂る必要はない」


 体脂肪率は12%以下にすることを徹底。エスナイデル監督は現役時代から信頼を置くアルゼンチン在住のフィジカルトレーナーの助言を受けながら、すぐに「食事改革」を断行します。


 高橋悠太GMやチームスタッフに有無を言わさず、献立の変更を指示。キャンプ2日目からメイン料理は1種類のみとなり、パスタのソースも消えました。




 食事の手配をするマネジャーの副島佑馬は、監督に言われるがままにホテル側へ細かくオーダーする羽目に。


 「肉の脂身は全てカットし焼き方は素焼きで。豚肉は一切出さないで下さい。パスタは茹でるだけでソースは要りません。テーブルに粉チーズとタバスコだけ置いて頂ければ結構です。その代わり、フルーツ、ドライフルーツ、ナッツ、ヨーグルトは常に用意して下さい」


 ホテル側からは、「本当にそれでいいのですか?」と確認されるほど。




 主食の白米は玄米に変更。しかし、ホテル側に玄米の用意が無く、副島マネジャーは高橋GMと一緒に沖縄のスーパーマーケットを駆け回り、数日掛かって3件からキャンプ全日程分の玄米を確保するなど、自前で調達することに。


 やっとの思いで手に入れた玄米をホテルに持ち込むも、ホテルの調理場では玄米を炊いたことが無く、シェフも困惑。試し炊きして、水の加減も確認するなど多くの苦労がそこにありました。


 監督からは毎日のように脂を使い過ぎない調理方法や、味付けまで細かいリクエストが届き、「ホテル側には急で無理なお願いもした」と副島マネジャーは話します。




 そんな副島マネジャーの苦労も知らず、当初、一部の選手からは「パスタは味がしないし、(素焼きの)肉は固すぎる」といった不満も出ましたが、「全ては監督が決めたことだから・・」と言い聞かせなければなりませんでした。


 キャンプが終わり地元の千葉に戻ると、クラブの栄養士にも強力してもらい食事管理を続けました。クラブハウスの2階にある食堂では、選手全員が揃って食事を摂ることになっており、食べる分量、食事を摂る時間、一日の食事回数も全て決まっているという徹底ぶり。


 午前練習前の朝食は8時で、消化最優先のメニュー。胚芽パン、くるみパンなどライ麦を使った黒いパンを主食として、小麦を精製した白いパンはNG。玄米フレーク、ミューズリー、さらにはカットフルーツ、ドライフルーツ、ヨーグルト、(塩分がカットされた)素焼きのミックスナッツなどが並びます。摂取するのは400キロカロリーから700キロカロリー程度。




 午前練習が終わった後の昼食は12時半。ビュッフェ形式でそれぞれがトレーに乗せていきます。メインのおかずは常に1品のみ。玄米、パン(はつみつ、ジャム)、パスタは選べますが、ソースは脂分を抑えた薄目の味付け。


 汁物はコーンスープが用意されており、サラダと付け合わせの納豆や梅干し、漬物に加えて温野菜、さらに鉄分を強化するための補食メニューなども常に用意されています。飲み物は牛乳と100%ジュース(リンゴ、オレンジ)のみ。


 練習が終わって帰宅しても、午後4時に軽食を摂り、夕食は午後8時に摂ることをクラブとして徹底。食堂に張り出されている献立表は1週間分で、アウェイの宿泊ホテルでもこのスタイルは変えませんでした。




 一日の食事回数を3食から4食にした時には、日本人の生活習慣を変えるという意味でも選手達は苦労しましたが、食事管理を始めて約半年が経った現在、週に一度、体祖成計で体脂肪率、筋肉量、体重など事細かくデータを取ってみると、その数値は見違える程変わっていきました。


 ある選手は、「体はすごくいい状態。腸のコンディションもいい。体の内側から変わってきているのが分かる」という言葉や、「食事もトレーニングの一環。今年は例年になく自分自身が動けている感覚がある」と話すなど、多くの選手が体の変化を実感している様子が伝わってきました。




 エスナイデル監督が改革したのは食事だけではありません。体の変化に合わせて、トレーニングの仕方もむやみに「時間」を浪費する代わりに「強度」を高めることが出来るようになりました。


 さらに、プロ選手としてピッチ外でどう振る舞い、どのように休むべきかといったことも細かく指導。その結果、けが人はこれまでより減少し、チームとしてより高いパフォーマンスを発揮できるようになっていったのです。




 シーズンも佳境を迎えた10月、他クラブが勝ち点を分けあっている中、ジェフ千葉の快進撃が始まります。




 あと一つでも引き分ければシーズン終了という断崖絶壁まで追い込まれたジェフ千葉ですが、10月7日に行われた第36節 vs ファジアーノ岡山戦から、11月5日の vs FC町田ゼルビア戦まで、なんと怒涛の5連勝を達成!!!!!


 順位も12位から、第29節 vs モンテディオ山形戦以来の一桁台となる9位に浮上。


 春先からやってきた一つ一つが確かな実を結び、J1昇格プレーオフ進出に向けてチーム一丸となって闘えているという手応えを、選手も、そしてサポーターも実感出来るようになっていったのです。




 過去、ジェフ千葉の連勝記録は、J1時代の2007年 第23節 vs 大分トリニータ戦から第28節 vs ヴァンフォーレ甲府戦の6連勝と、J2時代の2012年 第11節 vs ギラヴァンツ北九州戦から第16節 vs 大分トリニータ戦の6連勝が最高。


 今日、この試合に勝つことが出来れば、ジェフ千葉として3度目の6連勝に並ぶと共に、今後のクラブの歴史をも変えていくことになるかも知れない運命の分かれ道なのです。




 ピッチ練習していた選手達の姿もいつの間にか消え、豊田スタジアムは一時の静寂に包まれました。


 13時52分、Jリーグアンセムが鳴り響くと、それまで座席に座っていた両チームのゴール裏のサポーターが立ち上がり、それぞれの選手達を鼓舞するように一斉に応援合戦が始まりました。


 水色と黒に身を包んだ4人の審判団のすぐ後ろに、エスコートキッズと手を引きながらピッチに流れ込んでくる両チームの選手達。




 14時00分、ジェフ千葉にとって絶対に負けられない試合の始まりです!




 ジェフ千葉のフォーメーションは、5連勝のきっかけにもなった4-2-3-1の布陣。


 GKは佐藤優也選手、最終ラインは右から溝渕雄志選手、近藤直也選手、キム・ボムヨン選手、比嘉祐介選手の4人。


 ボランチに佐藤勇人選手と熊谷アンドリュー選手が入り、2列目は右に町田也真人選手、中央に船山貴之選手、左に為田大貴選手が並び、1トップにはラリベイ選手が立ち向かいます。




 試合開始から今シーズンのジェフ千葉の代名詞でもある「ハイライン・ハイプレス」で相手のパスサッカーを封じ込めに掛かるも、イージーなミスを連発してしまいリズムに乗ることが出来ません。


 11分、右サイドでセットプレーのチャンスを掴んだ名古屋グランパスは、背番号44 FWのガブリエル・シャビエル選手がゴール前で待ち構える味方に向かって精度の高いFKを蹴り込みます。


 手を挙げてボールを要求する背番号8 DF ワシントン選手が勢いをつけて走り込む先に、ピンポイントで近づいてくるボール。




 フィジカルの強靭な相手を挟み込むように体を寄せ合わせるジェフ千葉の3人のDF達。


 「ゴール前への折り返しは絶対にさせないぞ!」と、強い意志を持って名古屋グランパスのチャンスの芽を摘みに掛かる近藤直也選手。


 「試合序盤に少しミスが多かったのは、やっぱり経験の少なさだと思います。だからああいう展開になることは予想していたし、特に焦ることもありませんでした」




 4万5千人収容出来る相手のホームで、しかも名古屋グランパスはJ1昇格プレーオフ進出が決まっているという状況での試合。


 いくら春先に行われたフクアリでのゲームで2-0の完勝をしている相手とはいえ、昨年まではJ1で戦っていたチーム。


 潤沢な人件費を背景に、確かなテクニック、J1クラブでも欲しがる選手達が多くいる名古屋グランパスのネームバリューを意識すればするほど、ジェフ千葉の選手達の体が硬くなる気持ちも痛いほど分かりました。




 それでも選手達は勇敢に戦い続けます。相手が攻めた後に広がった広大なスペースに向かってGK佐藤優也選手がロングキックを蹴ると、相手DFの背後を小さな体で巧みに擦り抜け、前に出てきたGKをあざ笑うかのようにループシュートを繰り出す町田也真人選手。


 ボールは僅かにゴールポストの右を通り抜けてピンチを脱するも、ほんの十数秒前までチャンスだったシーンがあっという間にピンチに変わってしまうスリリングな展開に、深いため息で安堵するゴール裏の名古屋グランパスサポーター。




 15分過ぎあたりからボールが落ち着き始め、それと同時に前線からのプレスも機能し始めるジェフ千葉。


「緊張もあったし、いつもどおり出来ないところもありました。でも、二人がボールを奪い切るところまでやってくれていたので、自分ももっとやらなきゃと思いました。」


 大一番での経験が少ない熊谷アンドリュー選手をカバーするように、町田也真人選手や佐藤勇人選手が相手から何度もボールを奪い、ミスで失い掛けたリズムを取り戻していきました。




 27分、自陣深いところからキム・ボムヨン選手が最前線で体を張るラリベイ選手にボールを送ると、頭で落とされたボールは二人のDFの間を敢然と抜け出してきたFW 船山貴之選手の足元に届きます。


 名古屋グランパスのDFがバランスを崩そうと必死で体を合わせてくる直前、鍛え上げた体幹で体を支え、利き足の左側にボールを持ち替え、角度の無いところから左足を振り抜きシュート!


 GKとの1対1の駆け引きを楽しむかのように、さらに角度のキツいコースを狙ったシュートも、必死に伸ばした右足によってゴールラインの外に弾き出され先制ゴールはならず。




 37分、ゴール前で待ち構えていたラリベイ選手へのラストパスをカットされると、名古屋グランパスは持ち前のショートパスを繋いで最終ラインから攻めに転じます。


 DFからボランチ、さらにトップ下へとボールが渡ろうとした瞬間、佐藤勇人選手が決死のスライディングタックル!名古屋の攻撃は寸断され、攻守はあっという間に入れ替わりました。


 中央に転がったルーズボールを町田也真人選手が拾うと、素早く左サイドにいた為田大貴選手にパス!縦への突破力を警戒してDFの重心が後ろに下がったのを確認すると、右サイドから中に走り込んできたFW船山貴之選手がどフリーの状態でボールを要求する姿が見えました。




 為田大貴選手のクロスをダイレクトでシュートすると、勢いを増したボールはゴールの左下に向かって弧を描いて飛んでいきました。


 このシュートをゴール前で待ち構えていたラリベイ選手は軽く跨ぐようにしてスルー。
ボールの出どころが見難いシュートでしたが、相手GKが素早く横っ飛びでボールをキャッチ。


 GKの好守が光ると共に、攻めても攻めても得点できないジェフ千葉の流れの悪さを象徴しているようなシーンに映りました。




 前半は両者スコアレスのまま終了。序盤は勢いに乗れないジェフ千葉でしたが、落ち着きを取り戻してからは、素早いプレスで相手のストロングポイントを見事に消し、躍動感溢れるサッカーを展開しました。


 ハーフタイムに入り、後半戦のゴールを近くで撮影しようと反対側のゾーンに座席を変更しようと思ったのですが、名古屋グランパスのホーム最終戦ということもあってかなりの人だかり。


 今から向かってもどれだけ座席が空いているか微妙だったことから、Uさんと話し合って後半戦も同じ座席で観戦することにしました。




 迎えた後半、名古屋グランパスはFW玉田圭司選手に代えて長身のFWシモビッチ選手を投入して劣勢を打開にかかります。


 53分、右サイドでボールを保持していたDF溝渕雄志選手が中にいた熊谷アンドリュー選手にボールを送ると、試合が始まってから幾度となく相手DFとオフサイドラインの駆け引きをしていたFW船山貴之選手へ絶妙なタイミングでスルーパス!


 DFが必死の形相で捨て身のスライディングでクロスを阻もうとするも、一瞬だけ早くボールに触ったFW船山貴之選手がダイレクトでゴール前にクロスを送ります。




 同じタイミングで抜け出していたFWラリベイ選手が二人のDFのちょうど間の位置にポジションを取ると、待ち構えていたところにドンピシャのボールが入ってきました。


 GKと1対1の状況になっても慌てることなく冷静に動きを読んでシュート!素早く放ったシュートに相手GKは体を寄せる余裕も与えてもらえず、ボールはゴール右隅にコロコロと転がっていきました。


 ジェフ千葉にとっては待望の先制ゴール!!それまで淡々と声を出して応援していたジェフ千葉のサポーターでしたが、この瞬間はどちらがホームか分からない程の絶叫が豊田スタジアムに地鳴りのようにこだましました。




 ジェフ千葉の先制もつかの間の55分、名古屋グランパスは持ち前の繋ぎでジェフ千葉のゴールに攻め入ります。


 ペナルティエリア付近で田口泰士選手が左足でクロスを上げると、ゴール前には佐藤寿人選手とシモビッチ選手の二人が待ち構えていました。


 絶好のボールが佐藤寿人選手の頭をギリギリ超え、後ろに控えた長身のシモビッチ選手の頭に吸い付くように届くと、DFが体を寄せる間もなくヘディングシュート!




 これがまさかのクロスバーを直撃。無念さで顔を覆うシモビッチ選手に対して、決定的なピンチをポストに救われて手を叩く熊谷アンドリュー選手、その後ろで髪の毛を掻きむしるような仕草でホッと胸を撫でおろす佐藤勇人選手の姿が象徴的でした。


 ピンチとチャンスが一瞬にして入れ替わる試合中盤、得点も多いが失点も多い両チームの対戦は、ここにきて俄然、オープンな展開で先が読めない状況に。


 57分、相手最終ラインに素早く寄せてプレッシャーを掛けると、縦パスを読んだ熊谷アンドリュー選手がルーズボールを奪取、そのままゴール正面にボールが流れると、一瞬のギアを上げて町田也真人選手が襲い掛かります。




 DFがクリアし切れずボールが町田也真人選手に渡ると、突破力を生かして一気に縦方向にぶち抜きました。


 必死に守るDFの背後からスルスルとゴール前に現れるFWラリベイ選手。ボールウォッチャーになっていた相手DFは何が何だか状況が飲み込めなかったのではないでしょうか?


 ニアに走り込んできたラリベイ選手はGKにタイミングが読まれていると感じ、この状況で足をクロスして後ろの足でヒールシュート!駆け引きでは完全に勝っていたものの、ボールは僅かにゴールネットの外に突き刺さり得点には至りませんでした。




 両チーム一進一退の攻防を打破したのは、またしてもジェフ千葉でした。


 63分、一旦、GKまで戻されたボールを佐藤優也選手がロングキックすると、ワシントン選手とFWラリベイ選手が空中戦で競り合います。


 ルーズボールが名古屋DFに渡ろうとした瞬間、バウンドに合わせて突進してきた町田也真人選手が体を入れてボールを奪取。




 相手DFが体をよろけさせてバランスを崩している間に、町田也真人選手はGKと1対1の状況に。味方選手が誰もいなかったことから一人で運んだボールを強引にシュート!


 一度はDFの抵抗に遭って弾かれたボールが、また町田也真人選手のところに転がってきました。


 この数秒の間に両チームの選手達もゴール前になだれ込んできており、場面は名古屋DF4人に対し、ジェフ千葉の攻めは1人。




 自分でシュートを打つのは無理と判断した町田也真人選手は、ゴール前に走り込んできた為田大貴選手にクロスを送る選択をします。


 相手DF4人が警戒するも、町田也真人選手のスルーパスは寸分違わぬコースと強さで為田大貴選手の足元にすっぽり収まりました。


 ボールを受けた為田大貴選手は、一瞬右足でシュートを打つと見せかけ素早く警戒心の弱い左足に持ち替えシュート!右足のコースに重心をかけて守っていた相手DFをあざ笑うかのようにシュートはゴール左に突き刺さり、ジェフ千葉が待望の追加点を奪いました。




 興奮冷めやらぬ追加点から僅か1分後の64分、空中をさまよい両チームが収まりきらないボールを佐藤勇人選手が後ろ向きでジャンピングクリアすると、前方に転がったボールは名古屋グランパスの選手のちょうど間に。


 お互いの意思が合わず、中途半端に転がったボールに反応した熊谷アンドリュー選手が、味方のボール奪取を信じて全力で左サイドを駆け上がっていた為田大貴選手に絶好のスルーパスを送ります。


 同じタイミングで抜け出していたFWラリベイ選手は、相手DFの背後を抜けながら誰もいないペナルティエリアに一目散に走り込んでいきました。




 為田大貴選手にクロスを上げさせまいと必死に追いすがる名古屋DF、ゴール前に上手くポジショニングしていたFWラリベイ選手がどフリーの状況だと確認すると、最もスピードが乗った状態からクロスを入れます。


 決めて下さいと言わんばかりの優しいパスがFWラリベイ選手に届くと、ラリベイ選手はちょこんと軽く右足つま先でボールを前に出し、タイミングをずらして落ち着いてゴール右隅にシュート!


 この試合、自身2点目のゴールはダメ押しと言えるもので、チームも3-0とリードしたことでムードは最高潮に。




 ゴール裏に置かれているスポンサーの看板を飛び越え、肩を組みながら遠路はるばる応援しに来たサポーターと喜びを分かち合うラリベイ選手と為田大貴選手。


 両手を下から上に大きく振り上げてゴール裏のサポーターを煽り、「残り時間まだまだ行くぞ!」と、はっぱを掛ける二人に折り重なるように祝福の輪が広がっていきました。


 3つのゴールシーンを撮影し、ホッとしながら横を見ると、Uさんも出来過ぎで何も言えないとばかりに苦笑いをしていました。




 その後は少し気が抜けたのか決定的なピンチを迎えますが、GK佐藤優也選手を中心とした粘り強い守りで再三のピンチを切り抜けていきました。


 一矢報いようと必死に攻め続けるホームの名古屋グランパス。しかし、勢いと相性を味方につけた今のジェフ千葉を最後まで崩すことが出来ませんでした。


 アディショナルタイムの4分が過ぎ、主審のホイッスルが高らかに鳴り響くと、ピッチ上には明と暗が交錯しました。




 天を見上げ両腰に手を当てる者、力尽き膝からピッチに崩れ落ちる者、両手で頭を抱えながら何か独り言をつぶやく者・・・。


 この試合に勝利していれば、自動昇格の2位以内も見えていただけに、0-3という結果は名古屋グランパスにとっては受け入れ難いものだったはずです。


 一方、ジェフ千葉は絶対的アウェイという状況からの生還。連勝記録をクラブタイの6に伸ばし、最高の雰囲気でシーズン最終戦をホームフクアリで迎えられることになったのです。


                 第一部 完

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